平成29年度「家庭の日」作品コンクール 最優秀賞(三・四年の部)

うな重ファミリー

玉川村立須釜小学校 4年  片寄 太晴

 パタパタと、お父さんのあおぐうちわから、とってもいい匂いがただよってきます。僕の家は、ひいおじいちゃんの代から続く魚屋で今日は土用の丑の日なのです。

 おじいちゃんがうなぎを仕込み、お父さんが炭火でうなぎを焼き、おばあちゃんがほかほかの白いご飯にうなぎをのせ、お母さんが妹をおんぶしてレジ打ちをし、僕がお客さんにうな重を渡します。家族皆で作ったうな重を買ってもらえるのがうれしくて、

 「ありがとうございます。」

 「ありがとうございました。」

 と僕は、感しゃを込めてお客さん一人一人に言いました。

 今年は、家族にとって悲しい出来事がありました。ひいおじいちゃんが亡くなったのです。若いころひいおじいちゃんは、うなぎのたれ作りの名人でした。毎日、夕方たれの仕込みをするのですが、あまくてとてもおいしかったのです。年をとってにんちしょうになったひいおじいちゃんは、自分でできないことがたくさんあったので、家族皆で何年もお世話をしていました。それだけに、ひいおじいちゃんが亡くなったことで、家族皆の心に大きな穴があきました。僕もひいおじいちゃんが亡くなった事がなかなか信じられないという気持ちでした。

 そんな気持ちのまま、おそう式が終わり、丑の日が近づいてきました。そして、おじいちゃんやお父さんが忙しそうに店の準備をしているのを見て僕は、どうしてひいおじいちゃんが亡くなったのに、皆仕事ばかりしているんだろうと思って悲しい気持ちになりました。

 その日の夜、僕は、おじいちゃんに聞いてみました。

 「ひいおじいちゃんが亡くなってさびしくて悲しい気持ちなのに、何でしごとばっかりしているの?」

 するとおじいちゃんは言いました。

 「ひいおじいちゃんが大事にがんばって作った魚屋だから皆で仕事をがんばって魚屋を守ることが、ひいおじいちゃんの一番のくようなんだよ。」

 と、その言葉を聞いて僕は、悲しんでばかりいないでひいおじいちゃんのくようのために、魚屋のお手伝いをがんばろうと決めました。

 うな重は、うなぎと、タレと、さんしょうとご飯と、炭の具合、この全部がひとつになって初めて美味しいうな重になります。そんなうな重のように家族全員の気持ちをひとつにして、皆で一日中うな重を作り続けました。そのうな重を買ってくれたお客さん達の笑顔を見て、ひいおじちゃんのくようができたなあと思いました。

 今年の丑の日は、家族皆でひいおじいちゃんの味を守ったと同時に、ひいおじいちゃんが家族のきずなを守ってくれたように感じた一日でした。