平成29年度「家庭の日」作品コンクール 最優秀賞(中学・高学生の部)
家族と農業の関わり
玉川村立泉中学校 2年 小針 綾斗
「仕事手伝って。」
この言葉は、僕が暇そうにしているときに、よく両親から言われる。言われれば手伝うが正直、面倒くさいと思ってしまうこともある。
僕の家はトマト農家だ。家族は六人。祖父、祖母、父、母、僕、弟で日々を過ごしている。僕の家は「しぼりトマト」という品種の栽培を行っている。冬はそうでもないが、春になると急に忙しくなる。トマトの苗を植える範囲は広いし、実がなったらハウスの中で機械を使って温度管理という手間のかかる作業を行っている。そうなると、もちろん家族もそちらに手がかかり、忙しくなる。
農業は、仕事をする時間が不規則で、定時というものはない。午後四時くらいに早めに作業が終わることもあれば、夜の十一時くらいまで作業がかかることもある。
僕は家の仕事に対して苛立ちを覚え始めていた。農作業が忙しく、週末や長期休業では、一度も家族で出かけることがなかった。それで、思い切って母に、
「今度の休みの日、出かけられないの?」
と聞いてみた。すると母は、
「仕事が忙しいから。」
と言ってきた。この返答を聞いて、僕は落胆した。もう三~四ヶ月くらいどこにも出かけていない。仕事が忙しいのは分かるが、休みの日なら空いている時間が少しくらいはあるだろうと思っていた。周りの友達は週末になると須賀川や郡山方面に出かけているようだが、僕と弟はいつも家でテレビを見て過ごしている。クラスの友達が、どこかに出かけたという話をしているのを聞くと、正直羨ましいとも思う。なぜ僕の家は農業をやっているのか、何で休日がはっきりしている会社勤めではないんだろう、そんな疑問が日に日に募っていった。朝五時に起きて、夜も遅くまで作業をしている多忙な家族を見ながら、月に一日や二日の休みがあればいいのに、といつも思っていた。
ある日、僕はふと思ったことを聞いてみた。「うちのトマト、どのくらい儲かるの?」
我が家の生計がトマトだということは分かっていても、実際どれぐらい稼いでいるのかは全然知らなかった。だから聞いてみたかったのだ。すると父は、
「家族が十分に生きていけるくらい。」
と答えた。僕はそれを聞いても、どのくらい稼いでいるのか具体的には理解できなかった。百万円くらいかな、一千万円くらいかな。そんなことばかり考えていた。僕の農業に対する疑問は一層深まっていった。
また別の日、僕は父と進路のことについて話し合った。父からは、
「高校はどこに行きたいんだ?」
「大学に行くのか?」
そういう質問ばかりだった。僕はまだ何も決めていなかったので、適当に返事をしていたら、父は、
「おまえや家族が生きていけるくらいの金もあるし、大学に行かせる金もある。すべておまえが決めていいぞ。」
と言ってくれた。
僕は言葉に詰まった。僕たち子どものためにお金を無駄遣いせず、好きなものを買わないでいた親の想いを、そのとき初めて感じたからだ。家が農家であることに苛立ちを覚え始めていたが、このとき初めて両親を尊敬した。言葉が出なかった僕は、いろいろ考えた末、
「精一杯がんばります。」
と一言伝えた。ここで進路の話は終わった。
僕は両親が必死に農作業をしている姿をずっと見てきた。個人的には、休みが定期的に取れる仕事や、デスクワークの仕事よりも体力的につらいと思う。
しかしその分、農業のいいなあと思う面もある。それは、たくさんの人の笑顔が見られることだ。家で作ったトマトは、こぶしの里に出荷している。時々、トマトの出荷の手伝いに行くと、嬉しそうに家のトマトを持っていく人も見かける。家に直接買いに来てくれる人もいる。買いに来てくれた人は、みんな嬉しそうにトマトを持って帰ってくれる。
僕は、両親がつくったトマトを誇りに思う。たくさんの人に、おいしいと言ってもらえるトマトを作っている両親はすごいと思う。両親とお客さんの関わりから、お金だけでない仕事の価値を感じられたような気がした。
これからも両親の仕事を近くで見て、手伝いながら、自分の家で作っているものや、両親の仕事に対しての理解を少しずつ深めて生活していきたいと思う。農業に真剣に向き合う両親に負けないように、これからは僕自身も、
「精一杯がんばります。」