第38回少年の主張 福島県大会 優秀賞

自分が役に立つということ

馬市立中村第一中学校 3年 伊東珠瑠愛

「ねえ、ママは?まだ?」

と、幼い妹が怒った顔をして私に問いかけます。私には年の離れた妹が二人います。下の妹は今年で小学2年生です。

母は、その妹が入学したのを機に仕事を始めました。毎日とても忙しそうです。母が仕事で遅いため、時間帯によっては私が面倒を見ている時もあります。妹はまだ小学校低学年なので、下校時刻がとても早く放課後一緒にいられる家族がいません。このような時に一緒に宿題を見てくれたり、遊んだりしてくれる学童保育施設が、私が住む相馬市には設けられています。

我が家もこの制度を活用しようと思っていました。しかし、定員を越える希望者がいました。その希望者の中から、仕事の内容や同居家族の状況が大変な人から優先的に入会されます。妹は、学童保育施設を利用することができませんでした。母は仕事の時間を割いてもらうことが度々あり、その調整に苦労しています。私もなるべく早く帰宅して妹の面倒をみたいと思っていますが、2時間ぐらい妹の帰宅時間に間に合わないのです。

このように、まだ一人で留守をするには、心許ない小学生が、安心して過ごせる学童保育施設に入れないことも一つの「待機児童問題」として考えることができるのではないでしょうか。

新聞やニュースなどでよく耳にする「待機児童問題。」都市部ではより深刻な問題となっています。その憤りをブログに書き込んだことや保育園を住宅街に建設するか否かということも話題になっています。この問題は私にとって、身をもって体験している大きな課題です。

私は、将来保育士になろうと思っています。きっかけは、妹が生まれたことで、幼い子ども達に自分ができることは何かと考えさせられるようになったからです。また、学童保育の必要性を肌で感じ、子育てについて興味を持つようになったからです。

私は「子どもは地域の中で、育てられるべき存在だ」と考えます。子どもをもつ家庭はもちろん、その家族が関わる学校や職場、地域のみんなで関心を持って協力しなければ子育ては大変です。昔は、祖父母をはじめ家族や兄弟が沢山いて、みんなで面倒をみていたと聞きます。現在は、核家族が地域の多くを占め、育成会や方部の集まりなどの、地域住民の交流があまりないと感じています。その住人同士の関わりがなければ、どんな人かも知ることができません。そして、協力しようにも相手を知らなければ、何もできません。実は、地域住人の人間関係の希薄さも「待機児童問題」へつながる要因なのではないでしょうか。

今、中学三年生の私が役に立つこと、それは、自分が経験したことをもとにこの問題についてもっと様々な視点から学ぶことです。そして、その学びを活かして、しっかりと向き合っていくことだと思います。

大切な妹のために、もっと早く家に帰りたいと思います。また、母が安心して仕事が早く終われるように家の手伝いを率先してやろうと思います。家族に自分が役立つのは、本当に小さなことだと思います。でも、このような小さな積み重ねが地域社会でも広がっていけば、少しずつ前に進んでいくのではないでしょうか。

今回の経験は、私にとって将来の生き方を明確にするよい機会となりました。目の前の子ども達のためにこつこつと小さな事を丁寧に行います。そして、その子ども達を取り巻く全ての環境や人々へ関心を持ちながら保育をする、そんな保育士になりたいと思います。