第38回少年の主張 福島県大会 優良賞

命をつなぐ

南会津町立南会津中学校 3年 平野 知佳

「えっ?」

小学校から帰ってきた私に、従兄弟が亡くなったと父が告げたとき、私は言葉を失い、そう聞き返すのがやっとでした。それまで身近な人の死を経験したことがなかった私には、耳で聞く「死」というものが実感できなかったのです。従兄弟は次の年に小学校に入学するはずでした。持病はありましたが、お盆などには顔を合わせて遊んだこともあります。葬儀に参列したとき、小さい棺に入った従兄弟の姿を見て胸が苦しくなり、ずっと泣いていました。人が死ぬということはこんなにも寂しくて、悲しいことなんだと初めて思いました。幼い私がそうだったのですから、親である叔父や叔母は身を削られるような悲しみだったと思います。

その2年後、私の兄夫婦に赤ちゃんが生まれました。生まれたばかりの赤ちゃんは手足がとっても小さくて、かわいくて、ずっと見ていても飽きませんでした。何より新しい家族ができたことが嬉しかったです。そして同時に、この小さな命を大切にしようと、強く思ったことを覚えています。それは従兄弟の死を通して、命の尊さに気付くことができたからだと思います。「命」は多くの人に喜びを与え、悲しみも与える。とても重いものだと感じています。

中学2年の総合の時間に、南会津病院の助産師さんが行っている「めばえ教室」を受けました。針の穴くらいの受精卵が胎児へと成長する様子、命が誕生する感動的な場面を目の当たりにして、自分の命についても深く考えることができました。当たり前に存在すると思っていた自分が、奇跡そのもので尊いものだと実感した時、なんだか温かい気持ちになりました。十月十日私を育み、誕生を喜んでくれた両親、そして家族。今も変わらず様々な場面で私を支えてくれています。命はつながっているということをあらためて感じたのも、この授業のおかげだと思っています。

「命」について調べたとき、世界には5才以下の子どもの死亡率が高い国があることを知りました。生活環境などに伴う飢えや病気が原因です。年間約900万人の小さな命が失われているそうです。日本においても東日本大震災や熊本地震でかけがえのない命が犠牲になりました。私の従兄弟と同じように、生きたくても生きることができなかった人たちがたくさんいることを忘れてはいけないと思います。

そんな中、最近のニュースで自ら命を絶ってしまったり、子どもを虐待したりといった話を聞くと、もっと「命」について考えてほしいと思ってしまいます。要らない命なんて絶対にない。私はそう思います。確かにいじめなど、自分一人では解決できないことがあるかもしれません。人に話すことも簡単にはいかないかもしれません。でも、死んでしまったらそこで終わりなんです。ゲームの世界のように「死」はリセットではありません。本当にリセットしたいなら、環境や自分の考え方を変えていくほうがよっぽど効果的だと思います。生きてさえいれば、人生といったら大事かもしれませんが、つらい現状は変えられると私は信じています。だからあきらめないで、命を大切にしてほしいです。

私もまだ14年間しか生きていませんが、楽しいこともあればつらいこともありました。大泣きしたこともあります。今だって悩んでいることがあります。でもそれが「生きていく」ということではないでしょうか。私の慕う先生が教えてくれた言葉があります。「宿命に生まれ、運命に挑み、使命に燃ゆ。」この言葉は、「自分の命を大切にし、様々な困難を乗り越え、自分のやりたいことに全力を注いでいきなさい」という意味だと私は考えます。この言葉を胸に、私を育ててくれる家族のために、支えてくれる仲間のために、そして自分自身のために、これからも精一杯生きていきたいと思っています。大切な命をつなぐ一人として。