第38回少年の主張 福島県大会 優良賞

夢をあきらめない

須賀川市立長沼中学校 3年 星 櫻子

自分のやりたいことって、いったい何だろう。夢を見失いかけた私は、気が抜けてしまったように茫然としていました。

私の夢は、幼稚園の教師になることでした。妹が幼いこともあって、私はよく妹の面倒を見たり、遊び相手になったりしていました。そのせいか、小さい子どもと関わることが楽しくて、将来の夢も自然とそうなりました。職場体験学習も幼稚園でやりたいという思いが強く、幼稚園で体験できることが決まったときは、とてもうれしかったことを覚えています。私は大喜びでその日が来るのを楽しみにしていました。

いよいよ待ちに待った当日。五歳児の前に立ち、緊張しながら自己紹介をしたとき、

「ばばあ。」

という声とともに、一人の男の子が列からはみ出し、走り去っていったのです。一瞬のできごとに、私は何が起こったのかよく分からず、ただ驚くばかりでした。その後もやんちゃな男の子は、他の園児と一緒に行動することができず、私が声をかけても、

「うるせえ。」

と、暴言を吐いて、全く言うことを聞いてくれません。見かねた先生が、男の子のそばに行って落ち着かせ、床に膝をつき、男の子の目をじっと見つめながら、根気強く話しをします。そうすると、やっと戻ってくるのです。こんなことの繰り返しで、私はへとへとでした。その後も私はそのやんちゃな男の子が気になって、他の園児たちと十分に関わることができず、楽しいはずの職場体験が、一人の男の子に振り回され、何もできずに終わってしまいました。

私は、幼稚園の先生って大変だな。心からそう思いました。一筋縄ではいかないあの男の子に対して、見逃すことなく、正面から向き合っている姿に、自分にこんなことができるのだろうか。私は幼稚園の先生にはなれないかもしれない。私の夢が音を立てて崩れていくようでした。私にとって、幼稚園の先生になることはかわいい子どもたちと楽しく過ごすこと。そんなふうに勝手に勘違いしていたのでした。しかし、実際は個性豊かな子どもたちがたくさんいて、さまざまな集団生活のルールなども一つ一つ教えなくてはなりません。そんなことは分かっていたつもりでしたが、職業としての先生の意味をはき違えていたのでした。そして、仕事をすることの厳しさも実感し、私は大きな挫折感を味わい、深く落ち込んでしまいました。

家に帰ってから、私はその日のできごとを母に相談しました。すると、母は、

「そんなに落ち込まなくてもいいんじゃない。今すぐ決めることでもないしね。自分にできることが他にあるかもしれないよ。これからゆっくり探していけばいいよ。」

と、優しく励ましてくれました。母が言った「自分にできること」という言葉が心に引っかかり、そんなことが今の自分にあるのだろうか…。私はその日を境に、自分に何ができるのか、将来の夢について考えるようになりました。

夢をかなえることは、決して容易なことではありません。しかし、私は夢をあきらめようとは思いませんでした。なぜなら、職場体験では失敗も多かったけれど、幼稚園の先生方の真剣なまなざしに、やりがいのある仕事だと感じることができたし、子どもたちの笑顔は本当にかわいくて、あのやんちゃな男の子のかわいい笑顔も見たかったと、今では後悔しています。そんな気持ちのまま、何の努力もしないで、夢をあきらめてしまってもよいのか。こんな気持ちのままでは、自分を納得させることもできないと思いました。

何かできることがあるという、母の言葉には勇気づけられましたが、やはり、私は自分のやりたいことが自分の夢だと胸を張って言いたいのです。

だから、私は自分のやりたいことを、自分にできることに変えていく努力をしていきたいと思いました。私は夢をあきらめません。これからは、夢をかなえるために自分に何ができるのか、自分の可能性に挑戦する毎日です。

私は、自分の手で夢をつかむために、一日一日を大切に過ごしていきたいと思います。