第38回少年の主張 福島県大会 優良賞

「差し伸べられる手で変わる心」

いわき市立勿来第二中学校 3年 土井ゆかり

中学一年生の春、私は住み慣れた東京を離れ、勿来第二中学校に入学しました。学校の近くには、美しく広がる桜並木。心地よい海風を受けて、私は学校の門をくぐりました。

緊張して教室に入った私に、周りの友達は

「よろしく!」

「仲良くしていこうね。」

とても好意的に話しかけてくれました。勿来二中に入学してよかった。ここなら上手くやっていけそう。近寄ってきてくれる友達に囲まれて、私は、新しく始まる生活に心が躍りました。

しかし数日経つと、私は、周りの人たちの話になかなかついていけなくなりました。話題が分からず、会話が続かないのです。自分だけがよそ者のような寂しい思いに駆られ、次第に「ここの人たちとは合わない」と思い始めました。ついには「友達なんて必要ない」という気持ちになり、自分から距離を置くようになりました。クラスのみんなが楽しそうに会話をしているのを横目に、「うるさい、一人のほうがいい」そう自分に言いきかせていました。

そんな私に、一人、なぜだか積極的に話しかけてくれる人がいました。自分とはかけ離れたタイプで、友達も多く、笑顔がまぶしい子です。初めは気乗りしない返事をして会話を拒んでいたものの、私はいつしかその子の明るさに惹かれ、少し話をするようになりました。これまでとってきた友達との距離が縮まっていくのを感じました。自分の見ていた世界が変わっていきます。偏見や思い込み、ひがみや妬み・・・たくさんの色眼鏡を外してようやく見えた、人とつながることの素晴らしさ。私はそれを改めて実感しました。

今の私は中学3年生。部活は陸上競技部。海からの気持ち良い風を受けて、毎日走っています。「一人はチームのために、チームは一人のために」顧問の先生がいつも言ってくれるこの言葉に背中を押され、たくさんの人に支えられながら、駅伝大会に向けてがんばっています。自分の限界を決めないで、どんな壁にでも立ち向かっていきたい。友達が本気で頑張っている時には、私も本気で応援したい。私は、こう考えられるようになった、この勿来二中が大好きです。

今、青少年の非行が問題になっています。万引き、ドラッグ、夜間徘徊・・・犯罪に手を出す子どもたちが後を絶ちません。その子たちの心が犯罪へと向かってしまったのには何か理由があるのだと思います。この私だって、あのとき誰も手を差し伸べてくれなかったら、人の温かさに気付けなかったら、寂しさを紛らわすために非行に走っていたかもしれません。

青少年の非行を無くすためには、私は、社会の中に温かな人間関係を築ける場所を数多く作ることが大切だと思います。学校、地域、家庭など、様々な場所で誰かが子ども達の悩みに気付いて手を差し伸べてあげたら、心が救われ道を踏み外すことはないでしょう。もし、道を踏み外してしまった後でも、見捨てずにみんなで粘り強く声をかけ続ければ、いつか心が変わり、立ち直ることができると思います。

差し伸べられる手で、心は変わる。人の温かさで、非行は止められる。私も明るい社会を作る一員として、自分にできることから始めようと思います。