第39回少年の主張 福島県大会 優良賞

「発信力」

福島市立福島第四中学校 3年 渡邊  匠

 「好きになるばいみんなまた・好きになる風の福島だない」 

 このスローガンは昨年私が参加させて頂いた福島水俣中学生交流事業の熟議で考えられたものです。

 この事業で私は水俣や福島が苦しめられた偏見・差別から来る風評被害について深く知ることとなりました。風評被害を無くす為には興味を持ってもらい、印象を上書きし、交流を広げる事が大切なのではないか。この思いがスローガンと共に私の心に残り、マイナスをプラスに変える行動について考えるようになりました。

 水俣の復興のあり方からは学ぶべき事が多くありました。それは「故郷の歴史やそこに生きる人々の思いを忘れず、復興に向けての取り組みを伝統としよう。」というものです。

 私達の故郷福島は未だに解決されない問題を抱えながらも、一部では震災の風化が始まっているとする報道をよく見かけます。

 「福島でも水俣のように復興に向けての取り組みを伝統として引き継ぐべきではないか。」というのがこの交流事業で私が学んだことの一つです。

 ところで皆さんは「福島の復興」という言葉から福島のどんな未来を思い浮かべますか。私は今まで「復旧」も「復興」も同じ意味として捉えていました。しかし、水俣の中学生と話し合ううちに、彼らが、「復興」を「元に戻す。」ことではなく、「前よりも良くする。」と捉えていることに気が付きました。マイナスをプラスに変える行動です。

 このことに気付いた私は、とても驚きました。そしてこれこそが水俣の伝統となった復興の形なのだと痛感しました。

 では、福島の復興はどのように進められているのでしょうか。農産物について考えた時、福島の米は今全袋検査を行っています。これは他県には無い取り組みで、福島の安全を宣伝する為にとても有効です。また、あんぽ柿や桃を使った新しいスイーツやいかにんじん味のポテトチップスの開発、販売などもしています。福島ブランド復興は少しずつですが進められています。

 このような復興を伝統とするには何が必要なのでしょうか。

 私の学校では4月に実施した修学旅行で、発信力を育成する取り組みを行いました。写真や動画を使い、関西在住の方に福島のよさを伝えるプレゼンテーションを行ったのです。私たちは発表会を成功させるために準備や練習を重ねて本番に臨みました。

 ところが聞きに来てくださった方々を前にすると緊張のせいもあり上手く説明することができなくなってしまいました。質疑応答の場面では予想外の質問に答えられなかったり、沈黙の時間が続いたりしました。

 この時の経験から私は「発信力」こそ復興を伝統とするために必要な力なのだと考えました。発信力を育て、福島の良い点を広め、発信していくことこそ私達中学生が引き継ぐ福島復興ではないでしょうか。

 例えば、福島の今について県外の方から聞かれた時に一人一人が自信をもって答えられるでしょうか。私たちの答え方が「復興を進める福島のイメージ」や「復興しないままの福島のイメージ」を作り出します。

 世界中がインターネットに繋がり,個人の発信が大きな影響力を持つ今こそ、私たちは、発信力を高め、福島復興を伝える役割を担うべきだと思います。

 復興は私達中学生にだってできるのです。しかし、そのためには本当の発信力を身に付けることが必要です。「復旧ではなく復興を進めるため」に必要な力が広がれば復興となるはずです。復旧には終わりがあります。しかし福島の復興には終わりはありません。

 福島復興を伝統とするためにも発信力を高めていきたいと思います。