第39回少年の主張 福島県大会 優良賞

昔の自分と今の自分

西郷村立西郷第一中学校 2年 力田 知捺

 「人と比べず自分と比べなさい。」

 これは、父と母に今まで何度も言われてきた言葉です。

 私は小学校4年生の時にバスケットボールを始めました。私はスポーツは向いていないと思っていましたが、いざ始めてみるととてもおもしろく、毎日楽しく練習することができました。しかし、6年生になるとキャプテンになり、そのプレッシャーで楽しいと思えない時期がありました。でもいつしかそのプレッシャーにも慣れ、また楽しくバスケットポールをやることができました。

 中学生になり、バスケットボール部に入った1年生は全部で7人いました。正直私は、同級生にプレーで勝てるのか不安でした。その不安を消すためなのか、私は自分のプレーと人のプレーを比べてばかりいました。そんな様子を見ていた父から、ある日こんなことを言われました。

 「人と比べて自分が上だと思ったらそれ以上うまくはならない。もし、上手になりたいのならば、人と比べず、昔の自分と今の自分を比べなさい。」

 私はその言葉で、自分の行動が間違っていたことに気付きました。人には個人差がありますし、苦手なことと得意なことがあります。私は、自分の苦手なことから逃げてばかりで楽なことばかりをしていただけだと思い知らされました。私は、今までの時間を無駄にした、と少し後悔しました。次の日の練習からは、人と自分を比べるのではなく、昨日の自分と比べてできるようになっているかを考えながらやるようにしました。

 さらに、その思いを実践するために、新たに始めたことがあります。それは、2冊のノートの存在をあらためて見直し、使いこなすようにしたことです。一つ目のノートは、小学校時代から書いている試合の反省ノートです。このノートを見ると、今まで自分が頑張って努力してきた「証」があるように思えて自信につながっています。そのノートには、昔自分が失敗したことはもちろん、ほめられたことや、自分で良かったと思うプレーが書かれているので、いつでも過去の自分を振り返ることができます。私は父母の言葉を聞いて、このノートをよく見直すようになりました。そして、今でも同じミスをしていないかを心がけるようになりました。

 二つ目のノートには、今まで教えてもらったことをその日のうちに書いています。プレーをする上で大切なことや、プレーの仕方、心に残った言葉などを書いているので、復習のつもりで書いていると、改めて理解できたこと、疑問点などがはっきりとわかります。ノートに書くことで、自分を振り返り、今の自分に足りないことが見えてくるようになるのです。

 そうやって少しずつの努力を繰り返していった結果、私は、練習の時に悪かった点を次の日に意識して練習することができるようになりました。試合ではまだまだミスが多いですが、少しずつ良いプレーができるようになっています。父の言葉は今の私にとっては大切な言葉になりました。この小さな努力のおかげで、毎日目標を持って練習や試合をすることができています。

 今思うと、あの時父にあの言葉を言われていなければ、今の私はいないと思います。もしかしたら、前の自分よりひどくなっているかもしれなし、落ち込んでプレーができなくなっていたかもしれません。

 「人と比べず自分と比べる。」

 これは、バスケットボールだけでなく普段の生活にも生かせる考え方だと思います。特に人間関係では、自分のことばかり考えて、周りの人がどう感じ、どう思っているのかを忘れてしまいがちです。また、「他の人と比べて」自分がどう思われているのか、ばかり気にして、本当の自分を出せずにもやもやした気持ちになったりします。特に中学生になってからは、小学校と違って同級生も増え、部活動では先輩方との付き合いも増えたことで、自分がどのように行動すればよいのか悩んでしまう場面が多くあります。そのような時にも、バスケットボールと同じように、自分なりの「心のノート」を作り、昨日よりも良い行動ができるように心がけていきたいと思います。

 そうやってバスケットボールと同じように人間関係においても少しずつの努力を続けていけば、今すぐには無理でも、いつかきっと「みんなに認められる」素敵な人になれるのではないかと、私は信じています。

 これから先の人生には、つらいこと、苦しいこと、うれしいことなど、いろいろなことがあると思います。でも、どんな時も「人と比べない。」という言葉を忘れず、常に自分を高めるよう努力していきたいと思います。