第40回少年の主張 福島県大会 最優秀賞

一人の人間として生きる

白河市立表郷中学校 3年 鈴木 渚

 一昨年の夏、日本列島を震撼させる事件が起こりました。それは、障がい者施設の入所者19人を元施設職員が殺害するという事件です。犯人は、殺害した理由を「障がい者は自分の意志を持っていない。意志を持たない人間に生きる価値がないから、この世のために殺した。」と言いました。

 私は、この言葉を聞いた時、怒りで体が震えました。なぜなら生きる価値のない人間などこの世にはいない。ましてや障がいを持つ人は自分の意志を持っていないのではない。自分の思いを表すことができないだけだと思ったからです。それを一方的に意志がないと決めつけ、身勝手な理由で尊い命を奪った犯人を決して許すことはできません。

 私には一つ下に妹がいます。妹は、生まれつき障がいを持っているため、会話をしたり運動をしたりすることができません。そのため、一人ではできないこともたくさんあります。でも、それを家族である私たちが支えてあげることが大切だと思っています。

 妹は自分の考えを言葉にすることができないかわりに行動で示します。例えば私をキッチンへ連れて行き、冷蔵庫を指さし、自分ののどに手を当てます。これは、「喉が渇いたから飲み物が欲しい。」と伝えているのです。最初はその行動の意味が分かりませんでした。

 でも、妹が一生懸命に体を使って伝えようとするのを私も一生懸命に理解しようとしたら理解できるようになってきました。そういったコミュニケーションが一つ、また一つと増えていき、今では少しジェスチャーするだけで妹の伝えたいことが分かるようになりました。

 障がいを持っている人は場合によって、うまく話すことができず相手に思いが伝わらないこともあると思います。そんな時、相手に寄り添い、何を伝えようとしているのか、考えてみてください。時間はかかるかもしれないけれど、きっと分かるはずです。今、必要なのは、障がいがない人が障がいがある人を理解しようとする気持ちなのではないでしょうか。

 ノーマライゼーションという言葉を知っていますか。障がいを持っている人がそうでない人と一緒に助け合いながら生活をしていこうとする考え方です。ノーマライゼーションが確立された社会こそが、誰もが暮らしやすい社会なのだと思います。現在、障がいを持っている人たちが暮らしやすい社会を作るために私たちがしていることは何でしょうか。障がい者が生活するための施設を作ること、ユニバーサルデザインの開発。でも本当に大切なのは、障がいを持っている人とそうでない人の心の壁を取り除くことだと私は考えます。相手の気持ちを思い、自分たちができることを進んでしていくことで障がいを持っている人が今以上に暮らしやすい社会になっていくと思うのです。

 私自身、こうして妹の話を皆さんの前ですることには勇気がいりました。でも妹を含め様々な障がいを持つ人にできることは何かを考え、小さなことから実践していくことが必要であると思い、この場に立っています。私の背中を押してくれたのは両親です。両親に聞いたことがあります。「妹の介護って大変だけど生まない方がよかったって思ったことある?。」母は迷わず「そんなこと一度もないよ。」と言いました。父は「あの子のおかげで自分自身、周りの人に対して優しくなれた。自慢の娘だよ。」と言いました。そんな両親に私は、自分の考えは間違っていないと勇気をもらっています。

 障がいを持っている人もそうでない人も生きている人。すべてが同じ人として互いに手を取り合い、互いに相手を思い合うことで、みんなが幸せな社会になっていくはずです。私は、障がいを持つ、持たないではなく、一人の人としてこれからも家族とともに、誰もが平等で幸せな社会を作り上げていきたいです。