第40回少年の主張 福島県大会 優秀賞

「印象」の先にあるもの

西郷村立西郷第一中学校 3年 力田 知捺

 「第一印象は大事!」

 私たちは、いろいろな場面で、常に新しい人に出会っています。そんな中で、人と出会う心構えのひとつとして必ず言われるのがこの言葉。確かに、第一印象は良い方がいいに決まっています。でも、どうすれば第一印象が良くなるのか、中学生としては悩みどころです。では、私たちは、「印象」というものを、どのようにとらえていけばよいのでしょうか。私がそんなことを考えるようになったのは、ある女の子との出会いがきっかけでした。

 「あの子とは友達になれない。」

 入学式の日、クラスの輪の中心で明るく元気に話している女の子がいました。私は彼女のその姿を見て、「明るい子がいるな」と思った反面、「騒がしくて、なんか苦手なタイプかも」と、勝手に境界線を引いてしまったのです。そんな中で、私は彼女と同じ係になりました。一方的な苦手意識を持ったまま、彼女と一緒に過ごす時間。最初は苦痛に感じていましたが、時間が経つにつれて、彼女の礼儀正しい面や心優しい面など、良いところがたくさん見えてきました。そしていつしか、彼女に対する印象が「騒がしい子」から「思いやりのあるいい子」に変わっていきました。長い時間を一緒に過ごし、直接話ができたからこそ、彼女の良いところに気づくことができたのだと思います。そして、今ではお互いに、何でも気兼ねなく話すことができる大切な存在になりました。ある日、私は彼女に、私が抱いた彼女の「第一印象」について正直に話をしました。すると彼女は、「私も知捺とは友達になれないと思ってた。けどたくさん話をして、今では一番の友達になれたよ。」と言ってくれました。その言葉を聞いて、私は心から嬉しかったです。そして同時に、人を見る時には、勝手な想像から生まれた「印象」にしばられないようにしなければならない、ということを学びました。

 部活動でも、同じようなことを考えさせられる出来事がありました。私はバスケットボール部に所属しています。バスケットボールはチームワークがなければ勝てないスポーツです。しかし、部員の中に、毎日のように練習に遅れてくる人がいました。そんな彼女に対して、私は不満でいっぱいでした。「彼女は練習をさぼる人」という印象だけが膨らみ、一緒に試合をするのも嫌になっていました。そんなある日、私は、彼女の思いがけない姿を見ました。練習が終わってみんなが帰った後、彼女は一人で、夜遅くまで黙々とシュートを打ち続けていたのです。「私のせいで負けるわけにはいかない。だから時間がある時には、シュートが100本入るまで練習しているの。」彼女の言葉を聞いた時、私は後悔しました。彼女の行動の一部分だけを見て、彼女のすべてを判断していた私。自分がとても恥ずかしくなりました。その後は、彼女を信頼してプレーできるようになりました。

 私たちは、知らないうちに勝手な「印象」という変なメガネをかけて友達を見てしまっているようです。相手がどういう人なのか、どんな性格の人なのか、を本当に知りたいと思ったら、そのメガネは外して、「印象」の先にある相手の内面に触れなければならないと思います。そのためには、まず何よりも、相手と向かい合ってきちんと話すことが大切だということを、私はこのふたつの出来事から学ぶことができました。そしてそれに気づくことができたおかげで、彼女たちは、今でも私の大切な友達になっています。

 このように、学校で一緒に生活していても、「印象」にしばられて内面を見ることができない私たち。SNS等で顔を見ないやり取りが主流になっている今、知らないうちに、誤った人の見方をして、大切な友達を失っている人がたくさんいるのではないでしょうか。私たち中学生に今必要なこと、それは、見た目や雰囲気などの「印象」にとらわれず、「内面」に触れる人との付き合い方を学んでいくことだと思います。「印象」を越えた先に、今までは気づくことができなかった、身近な友達との新しい出会いが待っているのです。

 私はまだ、彼女たちとの出来事を通して、その第一歩を踏み出したばかりです。私はこれから、たくさんの人に出会うと思います。これからどんな人に出会っても、どんなに「第一印象」が悪くても、相手の内面を見てその人を好きになれる、そんな素敵な人に私はなりたいと思います。