第40回少年の主張 福島県大会 優良賞

誰かのために

西郷村立西郷第二中学校 3年 吉田 遥大

 「通りゃんせ基金にご協力ください。」僕の第一声は緊張のため声が震えていました。

 「通りゃんせ基金は県内の目や体の不自由な方のために、音の出る信号機を寄贈する取り組みを行っています。合唱コンクール終了後に、入り口付近で募金箱を持っていますのでご協力よろしくお願いします。」文化祭の休憩時間に、ステージ下のマイクで伝えました。僕が中学1年生の時のことです。

 小学校の時から、歯医者さんやお店の入り口に「通りゃんせ基金キャンペーン募金箱」と書かれた募金箱があることには気づいていました。6年生になった時、担任の先生のすすめで、ラジオ福島に職場体験に行く機会を得ました。そこでは、時折、通りゃんせ基金のCMが流れていました。そこで初めて、お店にあった募金箱が何なのかを知ったのです。

 さて、困っている人がいるとき、あなたは何ができますか。僕には何ができるだろうかと考えたとき、募金ならできるのではないかと思いました。見えないところで誰かの役に立っていると思うと、とても嬉しい気持ちになります。そのため、学校で行われる、白い羽根や赤い羽根などには欠かさず募金してきました。中学生になり、ラジオで再び「通りゃんせ基金」のお知らせが流れ始めた頃、僕はあることを思いつきました。「学校で自分がこの募金を呼びかけてみよう。」

 最初に、ラジオ福島に問い合わせをしました。その次には、教頭先生に相談しました。ラジオ福島からはポスターが届き、募金箱はお菓子の箱で手作りしました。校長先生から学校内で募金を行う許可を得たのは文化祭の前日になっていました。

 募金箱を持って、たった一人で入り口に立った時には、協力してくれる人はいるだろうかと不安でした。ですが、たくさんの人がお金を入れてくれて本当に驚きました。多くの人が協力してくれる度に、温かさや優しさを感じました。「なぜ1年生がやっているの?」という質問もあり、その時は「自分が言い出したからです。」と答えました。

 その後、生徒会の人たちにも協力してもらい、昇降口での募金を行い、合計で10,421円が集まりました。

 この出来事で僕はたくさんのことを学びました。まずは、自分でやりたいと思ったことを行動に移したことで「自分はやれるんだ」と自信がつきました。それからは、いろいろなことに積極的になり、学校の係の仕事をしたり、家の手伝いをしたりするようになりました。

 次に、優しさです。不安な気持ちでいっぱいだったとき、多くの人が協力してくれました。募金してくれたことももちろんですが、生徒会の人や、先生方が僕のやろうとしたことに力を貸してくれました。とても心強かったです。自分の周りには、自分を支えてくれる人がたくさんいるのだと気づくことができました。

 「誰かのために働きたい」そう思って始めたことでしたが、実は自分を大きく成長させてくれた出来事でした。僕はこれからも、誰かの役に立てることがあれば、進んで行動します。そして、自分自身もたくさんの経験を積んで、人として大きく成長していきたいと思います。