第40回少年の主張 福島県大会 優良賞

私の「誓い」

伊達市立伊達中学校 3年 鈴木満穂佳

 「あっ、危ない!」

 集団登校の子どもたちに知らせようと大声で叫んだのは、亡くなった娘でした―――。

 私たちのいる学校伊達中学校には、「安全の日」という日が毎月25日にある。十数年前の生徒が、町一番のお祭り、「天王祭」の夜に交通事故で亡くなった。そのことをきっかけに、「交通安全」について、「命」について考えようと定められたのがこの「安全の日」である。

 私は今までこの「安全の日」を毎月ただやり過ごしてきたように思う。しかし、夏休み前の蒸し暑い体育館である女性の話を聞いて、「命の大切さ」「命の重み」に対する認識がより深いものになった。

 「いってらっしゃい、気をつけてね。」

 いつものように娘を送り出す母親。この方が私たちがお話をうかがった大崎礼子さんだ。

 キラキラとした笑顔で、

 「いってきます。」

 と手を振る娘の涼香ちゃん。何気ない「あたりまえ」の日常の最後の朝だった。

 涼香ちゃんはその直後、小学校へ通うため、二人のお兄さんを含む、9人で集団登校をしている最中に亡くなる。飲酒運転をした軽トラックが前方から列に突っこんできたのだそうだ。

 「あっ、危ない!」

 そう叫んだのは、大崎さんの娘の涼香ちゃん。軽トラックは次々と児童をはね、そして止まった。死者2名けが人6名の大事故、死者の一人のなかに、まだ小学1年生の、7歳の、涼香ちゃんが含まれていた。

 「涼香が死んだ、涼香が死んだ。」

 その場にいた兄二人は泣き叫びながらこう言っていたそうだ。

 大崎さんは、事故の日の朝のことをとても鮮明にお話してくださった。

 「赤いジャンパーを買う約束、果たせなかった、もっと抱きしめていればよかった、もっと、もっと、あぁしていれば、こうしていればよかった。」

 「何であの時、こうしなかったんだろう。」大崎さんは、後悔しても後悔しても戻れないその日のことを毎日のように思い出している。もし、あの日、あの時に戻れるのなら、そんなに嬉しいことはないとまでに思うときがあるそうだ。

 この事故の日から大崎さんは「被害者」になった。涼香ちゃんは未来や可能性をすべて奪われた。「あたり前は本当に幸せなこと」「いつどうなるか、わからない怖さがあること」「命を無駄にしてほしくないこと」を涙ながらに伝えてくださった。

 そしてその中でこんなこともおっしゃっていた。

 「涼香の思い出は忘れたくないなと思っています。でももう17年も経ちました。私の記憶も薄れていく。それがとても悲しい。忘れ去られることが悲しい。だから、涼香を忘れないためにも、涼香の死を無駄にしないためにも、みなさんには、今日この話をきいたあとに「誓いのことば」を立ててほしいのです。」

 大崎さんのお話をうかがって、私は「誓いのことば」を立てた。私が生きている一日一日がとても貴重なものだから、大切にそして幸せに過ごしていきたい。たとえ、どんなにつらいことや悲しいことがあっても、決して「死にたい」なんて言わない。毎日、命を輝かせて生きる!

 毎月25日の「安全の日」。この日は悲しいできごとがあった日だけれど、「命の大切さ」、そして私の「誓い」を確かめる大事な日にしていきたい。