第41回少年の主張 福島県大会 優秀賞

勇気を出して

喜多方市立塩川中学校 3年 山内萌花

 「学級委員長に立候補する人はいませんか。」という先生の問いかけに、みんな周りをうかがい、息づまった空気がクラスの中に漂っていました。私は一番後ろの席からみんなの背中を見ながら、その空気を感じとっていました。同時に、今までの自分を変えるチャンスかもしれないという思いと、自分に務まるのか、という気持ちで心が揺れ動いていました。そして思いきって挙手をした時には、心臓の鼓動が聞こえそうな程、ドキドキしました。

 それまでの私は、人を不機嫌にさせたり、自分が嫌われたりすることを恐れて、いつも人に合わせていました。仲の良い友達でさえ本音が言えず、頼まれたことは断わることもできませんでした。そのため毎日気疲れし、解放感を求めるように家に帰る日々でした。そんな私自身を変えたくて学級委員長に立候補したのです。責任の重さはあったものの、自分の思いで行動できたことが一歩前進したようで、少し自分を好きになりました。

 しかし実際に活動していくと、毎時間の授業の号令やクラスへの指示など、決められたことはいいのですが、みんなの意見をまとめたり、思いもしない方向に話し合いやクラスの雰囲気が流されたりした時など、うまく発言することができません。また、以前の自分に戻ってしまいそうでした。そんな時、下校を共にしている友達が、私にこんな言葉をくれました。

 「みんなに好かれようとしなくてもいいんだよ。萌花を受け入れて側にいてくれる人が一人でもいれば十分だよ。」

 彼女が会話の中で何気なく発したこの言葉は、私の心に大きく響きました。私は少しずつですが、周りの意見とは違っても自分の考えを言い、悪い時は悪いとはっきり言うようにしました。すると、私と同じ考えをもつ人がいて、私を支えてくれたのです。私が本心を伝えることで、周りにいる何人かも、自分の本当の気持ちを言葉や行動で表してくれました。私は今まで感じていた本音を言うことの恐怖心が、逆に本音を言うことで自分を支えてくれる仲間が表れるという心強さに変わっていきました。

 私はこの考え方を、部活動の中でも生かしてみました。私はバドミントン部の部長をやっていました。部員が五十名もいるので部長の的確な指示が必要です。部長になりたての頃は、的確な指示が出せず、だらけた雰囲気の時も、注意することもできませんでした。自分のプレイをしながら全体にも目を配り、指示や注意をすることは、思った以上に大変でした。そのため私は、自分が一番できる声出しで部員をリードしようと思いました。「がんば」というかけ声は誰よりも大きく、たくさん言い、声が出ていなければ「声出して」と、何度も注意します。すると、私が十分にできなかった技術面の指導を、同学年の部員が進んで行い、私を支えてくれたのです。

 私がこの二つの経験から実感したことは、自分が勇気を出して心を開けば、相手も心を開いてくれる、ということです。たとえそれが自分とは違った価値観だとしても、自分の考えを見直したり、広げたりすることができるのです。集団生活での人間関係は、どちらかというとうわべだけでつながりがちで、深く考えずに周りに合わせ、心ない言葉や文字で傷つくこともあります。しかし、悩みながらも自分の心を開いていけば、簡単には流されない人間関係が築けると思います。

 私達が生きていく時代は便利な物に囲まれ私達の頭脳に代わり、AIが台頭する時代です。そんな時代だからこそ、自分の心や考えをもっと深めていくことが大切なのではないでしょうか。それは自分一人ではできません。相手に心を伝えることで深められると思います。私はこれからも、自分の心を開いて多くの人と関わっていきたいと思います。