第41回少年の主張 福島県大会 優良賞

復興大使体験に学ぶ~私の使命

相馬市立向陽中学校 3年 齋藤康洋

「努力をすれば夢はかなう。あきらめるな。」昨年、突然ガンで亡くなった父の最後の言葉です。仕事の上でも家庭においても人のために献身的に動くことが父の信条でした。私も誰かのために尽力したいと考えていたのですが、何一つ実現できたものはありません。しかし、父亡き後、なんとか父に報告できるひとつにたどりつかねば、と考え、「ふくしま復興大使」に応募しました。原発事故の風評と風化を克服したい、ふるさとへの誇りを言葉で表現し、世界中にその想いを発信したい。これが動機です。復興大使という使命上、そんな動機を切々と語ったものの、実を言うと、私はコミュニケーション下手な自分を変革したかったのです。自分よがりで、相手の目から心を伺いながら話を展開することが大変苦手な自分。そんな自分に、広い視野と多角的な見方をもって話を展開する資質が問われる復興大使の活動は自分変革の大きなチャンスだったのです。父亡き後、議員時代の後援会の方々は、「お父さんが伝えたかったことを伝える絶好の機会だ。堂々と参加して来い。」と背声をかけて下さいました。「そうか、お父さんも相馬の現状を多くの方々に自分の声で発信したがっていたんだ・・・。」私は父の死の悲しみに沈んだままではならないと痛感し、復興の現状や実態調査活動、新聞社の方々のレクチャーに進んで参加しました。

 台湾派遣に参加したのは私と同学年の女子、そして高校生の3人です。彼女らとミーティングし自分の勉強不足を彼女らから学び、変貌を遂げようとする相馬で働く方々の多忙極まる実態、道路交通網の充実ぶりと、反面、様々な職場、商店、福祉施設の人手不足を語りました。ソーラーパネルによる再生可能エネルギーの進展や安全でおいしい水産物が戻りつつある現状はぜひとも台湾の皆さんに熱くスピーチすべき、と、作戦を練りました。東日本大震災被災地支援に大きな貢献をして頂いた台湾も昨年二月、震災に見舞われ、台北市の復興状況は相馬の復興に大変参考になるものばかりでした。大きな共通点は「備えの充実」「減災のための学び」でした。災害多発国同士、特に台北と花蓮の中学生との意見交換は、互いに危機管理のプロ意識とSNSをかしこく活用して「守られる立場でなく守る立場」になろうということでした。2011震災当時、私は幼稚園児。その記憶は鮮明であるはずもなくなんとなくこんにちをむかえている感じでしたが、台湾の中学生と交流することで自分の成すべきことと現状認識の知識力、発信力の重要性を強く感じました。台北中学生とインスタグラムやツイッターでの交流も行い、帰国後も継続しています。SNSの常識外れな活用が話題の毎日ですが、私たちは正しい活用を心がけ、むしろ、世界中とつながっていかねばならないと感じます。

 独りよがりで幼稚なコミュニケーション力を広げたいと考え参加した復興大使の活動。そこで私は次のようなことを考えました。1.減災サミットの会を福島県がリードして開催する。2.世界中の現状をリアルに認識するためにSNSを有効活用する。3.私たち世代が自国の現状紹介サイトを開設する。SNSの発達に国境はありません。しかし、賢明な手段を模索して有効活用しているとはいえない我々・・・。私は自分をふりかえりながら周囲の仲間の現状をいたく危険に感じました。だからこそ、私が発信せねばなりません、世界中とつながる発信力を上手に活用していかねば!。

 努力の尊さを最後の瞬間まで説き、私の意欲を覚醒してくれた父の言葉。私はこの持ち前の発信力と「誰かのために貢献する」献身的な意気込みを持って、生きていきたいとあらためて考えました。