第41回少年の主張 福島県大会 優良賞

一人ひとりが輝く社会へ

相馬市立中村第一中学校 2年 佐藤菜々香

 「あなたのよいところは何ですか。」

 この質問に自信をもって答えられる人は、どのくらいいるのでしょうか。はっきりと答えられる人は、多くはないと思います。私がこう考えるようになったのは、道徳の時間に行ったアンケートがきっかけでした。そのアンケートには次のような質問がありました。

 「自分はダメな人間だと思うときがある」

 これに対して、そう思う、どちらかといえばそう思うと答えた人の割合が、合わせて全体の七割にも上がっていました。つまり、自己肯定感が低い人が多いということです。また、「自分にはよいところがある」という質問に対して、そう思うと答えた人は全体の四割もいませんでした。

 確かに私も、「あなたのよいところって何。」と聞かれたら、一つぐらいは思いつきますが、たくさんは答えられません。しかし、自分の短所なら山のように挙げることができます。私のように感じる中学生はたくさんいるのではないでしょうか。

 私達はどうしても自分のダメな所に目が行きがちです。これは、自分にだけでなく、他の人に対しても言えることです。

 例えば、クラスに走るのが苦手な人がいた時、その人をけなすような、心ない言葉を発して、相手を傷つけているような人を見たことはないでしょうか。私は今まで、そのような場面を目にする度、心がモヤモヤして嫌だなと感じてきました。そして、どうしたらよいのだろうと、ずっと考えていました。

 たとえ走るのが苦手でも、様々な面からその人を見れば、その人にしかないよさを見つけることができます。人の話を聴くのが上手な人、周りを楽しませることが得意な人、みんなの目が届かないような、でも大切な仕事を毎日欠かさず行う人、よさは十人十色です。一人ひとり違ったよさがあるからこそ、そのよさを生かし、それぞれの役割や仕事を果たして、世の中は成り立っているのだと思います。そんな当たり前のことを改めて気づかせてくれた出来事がありました。それは、今年の六月に相馬子どもコーラスの一員として、東京ホワイトハンドコーラスという団体と交流したことです。

 東京ホワイトハンドコーラスは、目の不自由な人と、耳の不自由な人とが、互いに手をとり合い、ハンディキャップを補い合いながら、一緒に音楽を奏でる団体です。目の不自由な人は声で、耳の不自由な人は手話と表情で歌を表現します。互いの出来ることを認め、生かし合い、みんなでつくりあげる音楽に、私はとても感動しました。それは、視覚・聴覚を精一杯生かし、お互いの心を通い合わせることで生まれる感動なのだと感じました。

 私たち健常者は、音色がそろわないと、良い音楽でないという固定観念にとらわれがちです。しかし、一人ひとりが自分の持ち味を十分に発揮し、心一つに奏でる音楽も、すばらしい音楽であることが分かりました。これは、私にとって、視野が広がる出来事でした。

 交流を通して、私はもう一つ大切なことを学びました。それは、出来ないことや人とは違うところをマイナスに見るのではなく、その違いをプラスにとらえるということです。自分の個性を最大限に生かし、よさを極めることが、よりよい社会につながっていくのではないかと考えました。

 私たちは、つい人のダメな所に目がいきがちですが、見方を変えて、その人のよさや持ち味に目を向けてみてください。そうすれば、いじめやつまらない争いごとはなくなり、みんなが笑顔で活躍できる社会になるのではないでしょうか。

 みなさんの隣にいる人にも、必ず輝くところがあるはずです。そして、あなたにも、あなただけのよさや輝きがあります。それを互いに認め合い、生かし合って進んでいきましょう。一人ひとりが輝く社会へ。