第42回少年の主張 福島県大会 最優秀賞
第42回少年の主張 全国大会 奨励賞

私たちにできること

二本松市立安達中学校 3年 菊地 瑠奈


 私は、3歳の時から消化器官出血という原因不明の病気と闘っています。何度経験しても、初めて行う検査は不安でいっぱいになります。そんなとき、優しく声をかけてくれるのが看護師さんです。「辛いよね」と共感してくれたり、「大丈夫、一緒にがんばろう」と検査のときにずっと声をかけ続けてくれたりと、私に力を与えてくれる存在です。

 そんな医療現場が今、新型コロナウイルスによって苦しめられています。今もなお猛威は衰えず、対応に追われている医療従事者が偏見や差別に辛い思いをしているというのです。病院に勤務しているだけで感染しているような扱いを受けているというニュースを見る度に、私は胸が締めつけられる思いがします。未知のウイルスに不安と恐怖でいっぱいになりながらも、頑張る先生や看護師さんの姿が目に浮かぶからです。

 そんな中、先日定期的な検査をするために病院に行く機会がありました。短い入院でしたが、私にはコロナ感染の心配がつきまとっていました。しかし、先生や看護師さんがいつもと変わらない笑顔で何度も「大丈夫、一緒に頑張ろうね」と励ましてくれるのです。先生や看護師の方も自分が感染するかもしれないという不安な気持ちと戦いながらも、私たち患者に寄り添い接してくれる姿を目の当たりにして、私はぐっと胸に迫るものがありました。そして、私もみんなの役に立ちたいという気持ちがわき上がってきたのです。

 それから数日経った時のことです。生徒会の先生から「学校を元気にしてみない?」と投げかけがあったのです。学校が再開したものの、常に3密回避、授業を進めるための7時間授業。班活動もなく、部活動も時間短縮と、いつしか私たちの学校生活はこなしていくだけのものになっていました。私たち生徒会はすぐに「学校を笑顔にしよう」という目標を立て、キャッチコピーを全校生徒から募りました。「みんなが熱中!笑顔で夢中!そんな達中!」。校舎内に大きく張り出したキャッチコピーに学校中が元気づくのが分かりました。次は、マスコットキャラクターの制作です。全校生が考えたたくさんの笑顔あふれるイラストの中から、二本松市の鳥「うぐいす」に二本松少年隊の衣装を着せた「あだっちゃん」のプロフィールを考え、昼の放送では「あだっちゃん」に声を吹き込みコメントを発表すると、前を向いて黙って食べている給食の時間、校舎中に笑い声が響いたのです。やってよかったと思えた瞬間でした。また、来校された方が「あだっちゃん」を見て、
「よく作ったね。元気が出たよ、がんばってね。」
と言ってくれた言葉は、私の心にうれしく響きました。

 今世の中は、大変な状況に置かれています。これは、決して他人事ではありません。私は今、こんな時だからこそ、自分事として物事を考え、行動できることが大切なのだと実感しています。私はまだ中学生で大人から見れば頼りない存在ですが、中学生の私だからこそできることを考えて、友達と協力して行動できる自分を誇らしく感じています。私たちの行動が笑顔をつなぎ、友達や地域のみんなの心を元気にしていくと信じて、これからも自分から活動していきたいと思います。そして、いつか「大丈夫、一緒に頑張ろう」と患者に寄り添うお医者さんになる夢を叶え、社会に役立つ人材になりたいと思っています。

 今生徒会では、安達中の元気を地域におすそ分けしようと企画を立てています。その中には、もちろん医療従事者の皆さんも含まれています。私たち中学生が「笑顔」を届けることで、みなさんの心が元気になるようにと願っています。