第42回少年の主張 福島県大会 優秀賞

一人一人の命の大切さ

伊達市立伊達中学校 3年 高野 莉歩


 新型コロナ、SNSによるいじめなど、命の大切さに関わるニュースが増えています。

 皆さんは命の重さについて考えたことがありますか。平成17年6月24日、私の命の重さは500グラム、身長は30センチでした。私の誕生日は本来9月のはず。早めに生まれてしまった私を家族や病院の方たちは必死で守ってくれました。生まれてから半年間も入院していて、ずいぶん迷惑をかけたんだねと母に聞くと
「毎日、医大に通わなければならなかったけれど、一度も大変だとは思わなかったよ。そして、無事な顔を見ると本当にほっとした。」
と懐かしそうに話してくれます。退院後もまだ2,000グラムしかなく、感染症対策など気が抜けなかったそうです。

 病院で、私を救ってくれたのは、主治医の石井先生や看護スタッフの方々です。小学校6年生のころまで、定期的に通院していました。石井先生は、入院中の頃をふり返り、
「ここまで大きくなったのは、莉歩ちゃんの生命力の強さなんだよ。」
と、穏やかに励ますように言ってくれました。この話を聞いて、自分でも、『私が生まれてきて、ここにいるのは奇跡なんだ。』と感じました。そして、『みんなに支えられ、助けられた命なんだ。』とも。小学校に入学してからは、身長も伸び、たいした病気もせず、友達と活発に遊んでいて母も安心していました。

 ところが、中学1年生の1学期、理由がわからずにいじめにあいました。お互いに相手を大事にするのが当たり前と思っていたので自分が避けられているのに気づいたときは途方に暮れました。なぜ避けられるのか、わからなかったからです。私を避ける人が日に日に増えていきました。後で聞いてみると、それは、私のことが嫌いだったわけではなく、周りの雰囲気に合わせてしまっただけという人が多かったのです。今、SNSでの誹謗中傷のニュースを見ると自分の場合と似ているようで辛くなります。避ける方は軽い気持ちなのかもしれませんが、私にとってはすごく辛いことでした。仲のいい友達は、
「避ける人が増えていくのを見ているときはとても怖かった。でも、なぜそうなってしまったのか、今でもわからない。」
と言っていました。

 最初のうちは、すぐ収まるだろう、このくらいで親に心配をかけたくない、という気持ちがありました。わたしはもともと学校が好きで休みたくないのですが、また言われたり無視されたりしたらどうしようと怖くなり、一時期、学校に行けなくなってしまいました。

 さすがに、母が心配して声を掛けてくれ、ようやく打ち明ける気になりました。母はすぐに学校に相談して、一人ひとりと話し合うことになりました。

 本当はすごく不安でためらう気持ちが強かったのですが、話せばわかってくれる人もいるはずと信じながら、勇気を出して学校に向かいました。話してみると、わかってくれたんだなと思う人もいれば、半信半疑を拭えない人もいました。でも、次の日からみんなの様子が少しずつ変わり、相談してよかったなと思いました。

 『迷惑をかけたくないから相談しない。』というのは、間違っていたことに気づきました。辛い状況のときこそ、周りの人に相談すべきなのです。遠慮せず、勇気を出して。

 幼い私の病室に半年も毎日通った母が、
「大変だと思ったことは、一度もない」
と断言しているのですから。

 辛いとき、周囲に迷惑をかけるのも勇気の一つ。コロナで不安な時代だからこそ、みんなで互いの弱さを共有して強くなっていくー これを母が教えてくれました。自分の命の重みと自分一人の命ではないことも。