第42回少年の主張 福島県大会 優良賞

意識の一歩

郡山市立郡山第六中学校 3年 長尾 心花


 「『目が見えないのに一人で歩くな。』という言葉が聞こえたんです」
白杖をついて点字ブロックの上を歩いていた男性のインタビューの言葉です。あるニュース番組で流れた映像に、私は目を疑いました。白杖をつき、点字ブロックの上を歩いていたにもかかわらず、その全盲の男性は人と激しくぶつかり、強い衝撃とともに心ない言葉を浴びせられたのです。白杖は壊れ、その男性の心にも深い傷が残りました。

 この映像を見て、悲しくならない人などいないのではないでしょうか。私は「相手の立場になる」とはどういうことなのかと、考えるようになりました。私達が何気なく過ごしている日々の中で、自分が加害者になってしまう可能性はいくらでもあるということを改めて感じたからです。

 例えば、点字ブロックは、何のために、誰のためにあるのか、分かってはいても、目の見える人達にとっては、風景の一部に過ぎなかったかもしれません。私自身、道を歩いている時に、点字ブロックの上を歩かないように気をつけてはいても、それほど意識はしていませんでした。街行く人達の中には、歩きスマホをしながら点字ブロックの上を歩いている人もいました。その学生や大人達は、点字ブロックを意識もせず、視界にも入れず、自分の世界の中にいながら、公共の場所を歩いているのだと思うと、私は怒りを感じました。これでは、障がい者の方に限らず、さまざまな事故を引き起こしてしまうのではないかと、危機感を覚えます。

 私達が暮らす生活の中で不安を感じる方々は、たくさんいるのではないでしょうか。私は、目を瞑って歩こうとしました。でも、怖くてすぐに目を開けてしまいました。それで私は、たくさんの「もし」を考えて生活してみることにしました。もし右手が使えなかったら。もし耳が聞こえなかったら、もし、心が傷ついていたら・・・と。感じたのは、不安や恐怖でした。だからこそ、私自身がもっと障がいの事について知らなければならないと思いました。理解が深まれば、相手を知るということになります。そうすれば、誰に対しても思いやりの心を持てるようになると思うからです。私一人の小さな気づきでも、いつしか周りに伝わっていき、誰もが安心して暮らせる社会に変わっていく気がします。

 偏見、差別。たとえ、そんなつもりはないにしても、ないからこそ、無意識に誰かを傷つけていることもあるかもしれません。思いを想像したり、気持ちをふかく考えたり、今起こっている問題について勉強したりして、少しずつ偏見や差別を減らしていく事はできると思います。私だけではなく、誰でもできることです。まずは、私から意識を変えていこうと思います。相手の立場について想像を巡らす。そして、いろいろな考え方を探す。相手が一番安心できるであろうと思われる行動をする。私が思いつくことは、これぐらいのことですが、小さくても、確実な一歩だと思います。障がいをお持ちの方も、そうでない方も、お互いに助け合ったり気遣い合ったりすることは、人として当然のことです。そして、それができるのは、私達です。皆がお互いに「自分の立場」をわかり合える世の中の一員として、私は行動していきたいと思います。