第42回少年の主張 福島県大会 優良賞

あたりまえ

矢吹町立矢吹中学校 1年 須藤 姫夏


 「すごーい。ケーキつくったの?」
弟は、びっくりした顔から満面の笑みを浮かべてそう言いました。4月の弟の誕生日。いつもは、あたりまえのようにお店でケーキを選ぶのが我家の恒例でした。小学生の頃の私は、平日3回、週末は遠征で、学校以外はバスケットボールの練習。自宅に居るときは、宿題をするか、寝ているか。まさか、ケーキ作りに時間を使うなど考えもしなかったです。今年の弟の誕生日は、あたりまえの日常とは違っていました。そして、弟からの
「おいしいね。」
という言葉で、お菓子作りの楽しさが分かり、他にも何か作ってみたいという興味を持ちました。

 ところで、みなさんは「あたりまえ」という言葉を聞いてどんなことを思い浮かべますか。あたりまえに過ごす6年間最後の小学校生活。あたりまえに行われるはずだった卒業式。あたりまえにやってくるだろう、中学校生活。今年は、新型コロナウィルスの影響でたくさんのことが制限されました。そして、たくさんの楽しみを自粛して家で過ごしました。でも、このことがきっかけで、あたりまえに過ごしていた日々がどれだけ大切なものかを教えてくれました。これは、私だけではなく、みなさんも感じたことでしょう。

 いつもあたりまえのようにできていたことができなくなった現状からのストレス。普通に買えていたマスクなどが買えない不安。観戦予定していた東京オリンピックの延期。

 そんななか、自分で手作りのマスクを作ったり、外出せず、自粛してリラックスできる時間を増やしたりしている人もいます。あたりまえのことをあたりまえにできない状況だからこそ、想像力を豊かにして、毎日を工夫して生活している。マイナスととらえず、プラス志向で立ち向かう姿勢に感動をおぼえました。

 私も、普段通りの生活を心掛け、自粛期間ならではの時間割を設定しました。数学は、中1の分野を分かり易く解説しているユーチューブを利用して、たくさんの問題を解きました。そして、弟たちの算数は、分からないところがあれば、私が教えました。英語は、英会話をオンライン学習を利用して発音をチェックしたり、会話のフレーズを覚えたりしました。姉弟でゲーム感覚で行いました。体育は、ミニハードルやラダーを使っての体力作りやバスケットボールの練習メニューを庭で行いました。家庭では、ネットで検索して、おやつ作りをし、姉弟で食べました。おいしいと言ってくれるととてもうれしい気分になりました。そして、お手伝いの時間も設けました。仕事をしている両親が少しでも楽になればと思い、その日毎、姉弟で洗たく、そうじ、お米とぎなどを率先して行いました。

 学校では、あたりまえに時間通りに集中して授業に取り組めましたが、長い休校中はスイッチが入らなく、やりたくないなーと思う時もあり、自分に厳しくすることや、妹弟、学年もちがうので時間通りにやることが難しく感じました。休み時間も入れましたが、チャイムがないので、
「もう少しで2時間目が始まるよ。」
「はーい。」
と、姉弟で声を掛け合うこともありました。しかし、毎日そううまくはいかず、弟たちを怒ることもけんかになることもありました。それでも姉弟、励まし合って乗り切れたときが多く、一人ではできなかったなと思う反面競う同級生も居ないのは、少しもの足りなさを感じました。また、勉強だけが大切だとは思わないので学校で先生からの話やいろいろなヒントが社会性や知性を高めたり、団体生活を共有したりすることが大切なんだと今の13歳の私には必要なことなんだとわかりました。

 この、コロナウイルスで、家族を失ったり友達を失ったりした人々。通常の生活ができなくて困っている人々。今までのあたりまえと違った環境に困り果てる日々を経験しました。普段、何気なく過ごしている日々は、とても大切なんだ、幸せなんだと気づくきっかけになりました。だから、私は、今、この瞬間を大切に前を向いて生きていこうと思います。そして、あたりまえの事に感謝しながら、一日、一日価値のある生活を送りたいと思います。