第42回少年の主張 福島県大会 優良賞

よりよい未来を目指して

白河市立表郷中学校 3年 小谷田 乃愛


 12月27日。皆さんは何の日かわかりますか?「ビャッコイ記念日。」表郷地区に自生する植物、ビャッコイが県指定の天然記念物に制定された日です。「ビャッコイ」はカヤツリグサ科ビャッコイ属の植物で、冷たい清水の湧く泉に自生する多年草です。長さが10㎝から50㎝ほどで、8月から9月にかけて白い小さな花を咲かせます。多くはオーストラリア、インドネシアなど、南半球に分布していて、北半球での自生は日本、しかも表郷だけなのです。「ビャッコイ」なんともユニークな名前ですが、発見されたとき、会津で採取された植物と紛れてしまい、「白虎隊」にちなんで名付けられたそうです。

 私たち表郷中学校は、毎年12月27日に、この「ビャッコイ」が自生している、地域の沼を清掃するボランティ活動に参加しています。沼を取り巻く杉の木から落ちた枝や葉を熊手でかき集め、ビャッコイを覆い隠す雑草とともに、一ヵ所に集める作業です。50年後、100年後もビャッコイが残っているようにと、地域の方と協力して、保護活動に取り組んでいます。とはいえ、年の瀬も迫り、北風が吹き、みぞれ交じりの寒い朝の作業は、決して楽なものではありません。はじめは、あまり乗り気ではなかったのですが、先輩方は「あたりまえ」といった雰囲気で、意欲的に取り組んでいました。実際、仲間と一緒に進める作業は、思ったほど辛いものではなく、あっという間に終わってしまったという感覚でした。そしてなんと言っても、清掃をした後のビャッコイ沼は、雲の切れ間から差し込む朝日にキラキラと輝き、くっきりと姿を現したビャッコイはなんともすがすがしく、清掃作業に参加して良かったと、達成感と充実感で心が満たされるのでした。

 しかし、このビャッコイも年々減少してきています。昔は茎の長さが男性の腰ぐらいまであったと言われています。ビャッコイが減少した原因は水と光の環境の悪化です。美しい清水に育つビャッコイですが、水量の減少が激しく、さらに半陰半陽が条件のビャッコイにとって、日照時間や気温の変化は、発育に大きな影響を与えているといえます。

 思えば、私たちの住む地域には、かつてたくさんのホタルが飛び交っていました。今でも梅雨が明けた初夏の頃から、お盆近くまで家の近くの用水路や、庭木の周りで見かけますが、昔に比べればずっと数も少なくなったと、祖父母が残念そうに話しています。それだけ、周辺の川や沼の水質汚濁が進んでいるのでしょう。

 わたしはふと、この地域を流れる川が、いずれ海へと向かうことを考えました。生活排水で汚れた水が海へたどり着き、海が汚れる。そうすれば、海に住む魚や貝、ホニュウ類にも影響が及ぶのです。数を減らすだけでなく、有害物質を含む生物も増えるかもしれません。世界には、魚介類を主として食生活を送っている国があります。食糧危機に陥り、生きていくことが困難になってしまうのではないでしょうか。また、長い間世界的な課題となっている「地球温暖化」も、豊かさ便利さを求めた人間の活動が原因です。その影響は遠い国の話ではありません。近年の度重なる大型台風による甚大な被害など、私たちにも身に迫る恐怖となっています。生態系の崩壊、自然環境の破壊は、巡り巡って人間社会に返ってくるのです。私たち人間の身勝手な行動が、50年後、100年後の未来を奪ってしまうかもしれないのです。

 今私たちにできることは、ほんの小さな力に過ぎません。しかし、一人一人の力の結集、一日一日の積み重ねが未来を守ることになると信じています。これからも、自分自身ができることに積極的に取り組み、自然を守っていきたいと思います。